どれぐらい前になるだろうか、母の姉妹といとこで「只見」へお正月旅行へ出かけた事がある。
おそらく、旅行はそれが初めてだっただろうな。いとこと、いとこの子供とかなりの人数で
電車も貸し切り?って思うほど、旅のしおりまで作って出かけた。
長い距離、電車やバスに乗るのが
苦手だった私も、この時はそんな事を忘れるほど楽しい時間だった。
いとこのお兄さんが学校の先生で赴任したのがこの只見、飲めないお酒を、家庭訪問で飲んで
段々とお酒が強くなったという話を聞いたり、冬は道路に出るまで玄関からトンネルを掘って
出勤した話も、想像の中で楽しんでいた、まさにその場所へ、しかもその冬の季節に行った。
バスと電車を乗り継いで、着いた駅は一面銀世界で猛烈吹雪!映画の世界だった。
いとこがお世話になった「福田屋」という旅館へ着くと、ベタベタの方言で出迎えてくれた
おばちゃん、笑顔が可愛かった〜。
笑顔って魔法みたいだよね。笑顔を投げかけられると、すっとココロに入って来て
直ぐに打ち解けちゃうんだもん。おばちゃんの笑顔は魔法の笑顔だった気がするな〜
遠慮なくポンポンと飛び出すコトバも素直に聞けるし、暖かいんだよね。
山菜料理をたらふく食べて、名物のおそばや餅もたらふく食べて〜
どんどん時間は過ぎて・・
次の日はスキー組と在宅組と別れ、私は旅館に残りました。
ちょっとだけ旅館の前の雪かきをしたり、部屋に入っていとこの子供と話をしてると
おばちゃん、ワラビのごま油炒めを大きなお皿に持って来てくれた。
これがメチャクチャ美味しくて、いとこの子とふたりで平らげてしまった。
よくよく聞くと「あ〜朝おひたしにして、出したけど、残ったから油でいためたんだよ〜」って
折角おひたしにして出してくれたのに、食べなかったんだな〜って。
そのうち、今度はお餅が出て来た!!これがまた美味しいったらありゃしない!
おかわりなんて、そうそうしない餅をなんどもお代わりして、遂には冷凍してあった
お餅まで出させる始末(汗)それだけ美味しかったんだよな〜おばちゃんが慌ててたのも
思い出す(笑)そんなに食べるとは思ってなかったんだろうな〜。
そのうちスキー組も戻って来て、帰宅準備。もう1泊したいね〜って本気で思ってたけど・・
旅館の前でおばちゃんを囲んで記念撮影もして、たしか娘さんの旦那様に車で駅まで
送ってもらい、段々と強まる雪の中、私達は帰路につきました。
帰りは危うく雪でバスと電車で帰って来るはずが、バスが動かなくなり、急遽予定変更で
磐越東線でいわきまで戻って来ました。あの時も本当にドタバタだったけど
うちのいとこは足りない所は補えるバランスがピカイチなので何事も無く無事に戻る事ができました。
本当に楽しかった〜北の町に住んでいるけど(わたす)あの量の雪は只見で見たっきり。
猛烈な吹雪の中、線路がどこか分からないぐらいの白い銀世界の中にぽつりとある駅舎。
どれもこれも新鮮で、鮮明に思い出す事ができる。
今年の夏、先生のいとこが同窓会で只見へ出かけた、今度は奥様と子供も連れて。
そんな話を聞きながら、「また行きたいね〜秋も良いんだよね」なんて母と話してた。
帰って来たいとこから、お土産のでっかいスイカもお裾分けしてもらった。
あの、いとこと行った只見をまた思い出す夏だった。
海の町から戻って、新学期もはじまった9月
母から携帯に連絡が入った「只見のおばちゃん、亡くなったんだよ・・・・・」
その後のコトバは、頭の上の方で聞いてたみたいな感じだった。
あの冬の日に会ったきり、もうずっと会ってなかった。
離れているから、なんだか信じられないし、夢を見ている感じで、ちっとも現実とは
受け止められない。だって、また行きたいね!なんて言ってたんだもん。
またいとこで行きたいね〜なんて言ってたし。ぐっと気持的には「只見」が近づいてた。
なのに、
話を聞くと、本当に突然の事。おばちゃん自身に突然起こってしまった不慮の事故。
いつもならば、おばちゃんの分まで人生精一杯生きなくちゃ!空の住人になったら
おばちゃんを尋ねて、色んな話を聞かせる為にも、色んな経験して、色んな人に出会って・・
なんて生きる事に猛烈に意欲的になる、更にパワーアップする自分なのに、何故か今回は
違う。
いつもの生活、でも、時々体が固まってふっと色んな事を考える。良い事も悪い事も。
楽な方に流されて、結果的に、また楽な所へ戻ってばかりいた自分。そして自分にがっかりして
幻滅する事もあったりして、吐き気がするぐらい自分が嫌になったりして、外に出て
買い物をしていても、自分を見た周りの人間が後ろ指さして笑われているって
変な錯覚を起こしてみたり、ここ数日、実はそんな葛藤の中にいました。
生きているからこその葛藤でもあるんだよね。
おばちゃんの死は、私にはとても大きな出来事になりました。
あのワラビのごま油炒め、リクエストしたかったよ、おばちゃん。
帰る日にこたつに入って、所ジョージの番組におばちゃんが出たときの録画を見ながら
大笑いしたあの時の笑顔、福田屋に行けば、いつでも笑顔で、ベタベタの方言で向かえてくれる
それが当たり前だって思ってたのに・・・残念でなりません。
私の中で、いとこと行った「只見旅行」そこで出会ったおばちゃん、おばちゃんの子供達
子供さんの旦那さん、恐ろしく猛烈な吹雪、山のごちそうは永遠に忘れられない思い出です。
可愛い笑顔のおばちゃんのご冥福をお祈りしたいと思います。
想い出話におつき合い下さってありがとうございました。
何か残しておきたかったので、あえてここに書く事にしました。